「マクナマラ回顧録」

マクナマラ回顧録 ベトナムの悲劇と教訓


毎日ちょっとずつ読んでいたがようやっと読了。
長かったが、興味深い回顧録だった。


果てしなき論争 ベトナム戦争の悲劇を繰り返さないために」へと続くマクナマラ回顧録
面白いのは回顧録といいながら、実際はマクナマラ(というかジョンソン政権)がどのようにベトナムを認識し、どのように関与したかについて詳述していること。
実際、本書はマクナマラが国防長官を辞した(馘首になった?)時点でおわっているので、「マクナマラ国防長官のベトナム戦争回顧録」というのが正確。
ま、サブタイトルが「ベトナムの悲劇と教訓」だし、そこまでする必要はないのだけれど。


先に「果てしなき論争」を読んでいたので、マクナマラの主張というか、ジョンソン政権内でのベトナム戦争の認識、マクナマラの立ち位置は分かりやすかった。
その上、本書はブライアン・バンデマークを共著者として、各種記録を収集させ、記憶より史料を優先した著述となっているとのことなので、史料的価値はかなり高いものと思われる(無論、一定の誤り、思いこみ、限界があるのは当然として)。


本編の内容は一度読んだだけで語ることは難しいが、興味深かったのは巻末に載っていた回顧録に関する書評。
特にニューヨークタイムズによる本書を完全否定した社説には唖然とさせられた。
まるでマクナマラが嫌がるアメリカ国民を無理矢理ベトナム戦争に引きずり込み、無意味に殺し合わせた、というような主張は事実無根も甚だしい。
このような荒唐無稽な批判の内容はともかく、本書がこのような反応を引き起こしたという事実、それ自体が興味深い。
やはりアメリカはいまだに「ベトナムという国を十分には理解してないし、気持ちの上で完全に決着をつけてもいない」し、「傷は癒されぬままだし、教訓も学ばれていない」からなのか。
ベトナムの悲劇と教訓」については「果てしなき議論」という不完全な答えが出されたが、この後がどう続いていくのか。
興味深く、今後も注視したい。


原書が読めればともっと追いやすいのだが、さすがに無理っぽい。
ベトナム語は論外だし。
次は反マクナマラっぽいハルバースタムでも読むかな。
その前に積んである「ドキュメントヴェトナム戦争全史」が先だが。